多発性硬化症(MS)に関する「さ行」の用語解説

 
  • サイトカイン
    細胞から分泌されるタンパク質の一種で、特定の細胞に情報を伝達するものをいいます。多くの種類がありますが、その中でも特に免疫、炎症に関係したものが数多く発見されています。インターフェロンもサイトカインのひとつです。
  • 再発(さいはつ)
    MSの場合、新たな症状があらわれて24時間以上持続したとき、または過去に経験した症状が少なくとも1ヵ月間消失していた後に再び症状が出たときに、再発と診断されます。
  • 再発寛解型MS(さいはつかんかいがたエムエス):Relapsing Remitting Multiple Sclerosis:RRMS
    急に症状があらわれ、再発と寛解を繰り返し、再発と再発の間では病状の進行はみられないタイプのMSです。一度発症してから、その後何年も症状が落ち着いている人もいれば、1年に何度か再発する人もいます。日本でも欧米でも最も多いタイプで、欧米では85%の患者さんが病気の初期にこのタイプと診断されます。
  • 作業療法(さぎょうりょうほう)
    身体または精神に障害のある人に対して、手芸・工作などの「作業」を通じて、社会に適応できる能力の回復を図ることをいいます。医師の指示の下に作業療法を指導する人を作業療法士といいます。
  • 三叉神経痛(さんさしんけいつう)
    三叉神経は頭部と顔面の皮膚、口や鼻の粘膜の感覚を支配しています。この三叉神経に沿って鋭い痛みが顔面に走ることがあり、これを三叉神経痛といいます。脳幹に病巣ができた場合に起こることがあります。

 
  • 視覚障害(しかくしょうがい)
    眼から外界の情報を得る(見る)機能の総称を視覚といい、視覚機能の障害を視覚障害といいます。視界がぼやけて曇る、視野の一部が欠ける、二重に見えるなどの障害があります。視覚障害はMSではよくある症状で、程度や期間は病巣のでき方によって異なります。
  • 視覚誘発電位検査(しかくゆうはつでんいけんさ):Visual Evoked Potentials:VEP検査
    通常は白黒が反転するチェック模様が表示されているモニターを見て、視覚への刺激が脳までどのように伝わるかを調べる検査です。病巣の有無と位置を確認する誘発電位検査のうち、視神経の異常を調べることができます。MSでは視神経に病巣ができることが多いため、この視覚誘発電位検査が重要なものとされています。
  • 磁気共鳴画像検査(じききょうめいがぞうけんさ):Magnetic Resonance Imaging:MRI検査
    強い磁場を用いて脳や脊髄の断面写真を撮り、脱髄している部分である病巣を写し出す検査です。活動している新しい病巣はガドリニウム造影剤を使って撮影することができます。
  • 軸索(じくさく)
    神経細胞から伸びている長い突起のことで、隣接する細胞に信号を伝えます。ひとつの神経細胞に通常1本存在し、神経線維とも呼ばれます。軸索は通常、ミエリン(髄鞘)に包まれています。
  • 自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)
    本来は病原体などの自己と異なる異物を認識して攻撃する役割をもつ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対して反応し、攻撃を加えてしまう病気の総称です。MSも自己免疫疾患のひとつです。
  • 視神経(ししんけい)
    網膜(眼球の後ろ側の内壁を覆う薄い膜状の組織)で感じた光を神経の刺激として脳へ伝達する一種のケーブルのような組織です。
  • 視神経炎(ししんけいえん)
    視神経のどこかに炎症が生じた状態をいいます。視神経炎は片眼に生じることもあれば両眼のこともあり、軽度から重度の視覚障害を引き起こします。視界がぼやけて曇る、視野の一部が欠けるなどの症状があります。
  • 膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)
    膝の下をゴムハンマーなどで叩くと足が跳ね上がる反射のことです。神経障害の部位を診断するための検査として頻繁に行われています。
  • 疾患修飾薬(しっかんしゅうしょくやく):Disease-Modifying Drug:DMD
    ある病気の経過を、治療せずにそのままにした場合とくらべて良くすることができる薬のことを疾患修飾薬(DMD)といいます。MSでは、再発を予防したり、身体の障害が進行するのを抑える薬のことをいいます。
  • 疾患修飾療法(しっかんしゅうしょくりょうほう):Disease-Modifying Therapy:DMT
    疾患修飾薬(DMD)を用いた治療のことです。
  • 失語症(しつごしょう)
    声を出すための器官やそれに関わる神経には異常がないのに、「話す」「聞く」「読む」「書く」などの機能に障害が出て、言いたいことが言えない状態になることです。大脳に病巣ができるとあらわれることがあります。
  • 指定難病(していなんびょう)
    難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)では、「発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない、希少な疾病であって、長期の療養を必要とする疾病」を「難病」と定義して、調査研究や患者支援などを推進しています。さらにこのうち、国内での患者数が一定(人口の0.1%程度)に達しておらず、客観的な診断基準が確立している疾患を「指定難病」として、医療費助成の対象としています。
  • 視野欠損(しやけっそん)
    視神経炎などで視神経や大脳に病巣ができたときに、非常によくみられる症状です。視野の一部が欠ける症状で、病巣ができる場所によって視野の欠け方は異なります。
  • 小脳機能(しょうのうきのう)
    小脳は運動を調整する機能をもち、正常な動きと姿勢を保てるよう、平衡の調整を図っています。そのため、小脳に病巣ができると、運動失調や振戦、めまい、眼振などが起きたりします。
  • 自律神経系(じりつしんけいけい)
    消化、呼吸、発汗、あるいは新陳代謝のように生命活動に必要な機能を無意識にコントロールする神経です。自律神経系には、交感神経系と副交感神経系があります。交感神経系は、体を活動的な状態にする働きがあり、副交感神経系は体を休めるように働きます。たとえば、交感神経系は脈拍、血圧、呼吸数を増加させますが、副交感神経系はそれらを減少させます。
  • 神経因性疼痛(しんけいいんせいとうつう)
    末梢神経や中枢神経の神経組織が直接損傷を受けたり、圧迫や血の流れが悪くなることによって、障害を受けた時にあらわれる痛みの総称です。
  • 神経細胞(しんけいさいぼう)
    動物だけにみられる特殊な細胞で、情報の伝達や処理を行うことができます。神経の構成単位であり、ニューロンとも呼ばれます。
  • 振戦(しんせん)
    無意識のうちに、筋肉が周期的に繰り返し収縮するために生じる規則的な「ふるえ」のことで、筋肉の動きを調整する神経に障害があるときにあらわれます。体全体に起こることもあれば、手の指先など一部に起こることもあります。代表的なものに、何かをしようとしたときに手がブルブルふるえる、動きがゆっくりになる、リズムが悪くなるなどの症状があらわれる「企図振戦」があります。
  • 深部感覚異常(しんぶかんかくいじょう)
    体の位置、動きや振動などを感知する機能である深部感覚が障害されることです。深部感覚異常が起きると体がどのような位置にあるのかがわからなくなります。下肢に深部感覚異常があると、感覚性失調により、フラツキ歩行となります。

 
  • 髄鞘[ミエリン](ずいしょう[ミエリン])
    神経細胞の軸索を覆っている物質です。髄鞘(ミエリン)は軸索の全長にわたってあるのではなく、ランビエ絞輪という切れ目が存在し、この切れ目は伝導効率を増すために重要な役割を果たしています。髄鞘(ミエリン)が損傷すると、電気信号の伝わり方が遅くなったり、遮断されたりして、多くの神経症状をきたします。
  • ステロイド剤(ステロイドざい)
    MSの再発時に使用される薬であり、副腎から分泌される副腎皮質ステロイドホルモンを化学的に合成したものです。ステロイド剤には炎症を抑える作用や細胞増殖抑制作用、免疫抑制作用など、さまざまな効果があります。
  • ステロイドパルス療法(ステロイドパルスりょうほう)
    点滴用のステロイド剤を短期間で大量に使用する治療法のことです。急性期の標準的な治療法として用いられています。

 
  • 生活の質(せいかつのしつ):Quality of Life:QoL
    個人の生きがいや精神的な豊かさのことをいいます。病気を治療するときも、生きがいや豊かな気持ちをもった健やかな生活を目指すことが大切と考えられています。
  • 性機能障害(せいきのうしょうがい)
    性感覚の低下、性欲減退、勃起不全、射精不十分などの、性機能の障害です。精神的なストレスから起こることもあります。
  • セカンドオピニオン
    より適した治療法を患者さん自身が選択するために、主治医以外の医師に、病気の診断や治療方法について意見を聞くことをいいます。
  • 脊髄(せきずい)
    脳の下から縦に伸びる、約40~45cmの器官で、脳と合わせて中枢神経系と呼ばれます。脊髄から出る末梢神経は身体の各部につながっていて、脳と末梢神経の間で感覚・運動の情報を伝えます。
  • 脊髄反射(せきずいはんしゃ)
    外からの刺激を受けた場合に、刺激が脳まで伝わる途中、脊髄で折り返して反応が起こる現象です。熱いものにさわったときに無意識に手を引っ込めるというような反射のことです。
  • セロトニン
    脳内の神経伝達物質のひとつで、他の神経伝達物質の働きをコントロールし、精神を安定させる作用があります。うつ病や不眠症はセロトニンの不足が原因といわれています。

 
  • 躁うつ状態(そううつじょうたい)
    気分が高揚する躁状態と気分が落ち込むうつ状態が交互にみられる気分障害で、双極性障害ともいわれます。
  • 造影剤(ぞうえいざい)
    MSのMRI検査ではガドリニウム造影剤を点滴静注して用いることがあります。形成中の病巣では血管壁が破れているため、造影剤が漏れ出して濃く写ります。
  • 総合障害度評価尺度(そうごうしょうがいどひょうかしゃくど):Expanded Disability Status Scale:EDSS
    身体の機能障害の程度を0~10まで、0.5ポイントずつ20段階で評価するもので、身体機能障害を評価するために最も広く使用されている基準です。歩行機能と各機能障害の総合評価に基づいています。MSが進行して機能障害が重くなるにつれて、EDSSの点数は高くなります。
  • そう痒感(そうようかん)
    皮膚の不快な感覚の一種で、かゆみを感じます。