症状

脱髄病巣が起きる場所とその組み合わせは人によってさまざまであり、出てくる症状や程度も人それぞれです。同じ患者さんでも、毎回同じ症状が出るとは限りません。症状の変化につながる比較的大きな脱髄病巣がいつどのくらいの頻度で起きるかも人によって違います。また、ミエリンが修復されると症状はおさまることもあり、初期には症状が出たり消えたりします。
MSでは、次のような症状がよくみられます。

視覚障害

視界がぼやける、色がわからない、視野が欠ける、ものが二重に見える など。

感覚障害

痛みや温度がわからない、触覚が鈍くなる など。しびれ感、痛み など。首を曲げると腰から足にかけて感電したようなしびれ感や痛みが走ることがあり、これを「レルミッテ徴候」といいます。痛みをともなって筋がつっぱり、一定時間動かせなくなることがあり、これを「有痛性強直性けいれん」といいます。

運動障害

手や足に力が入らない、つっぱりのためスムーズに動けない、ろれつが回らない、飲み込みが難しくなる など。

平衡障害・失調・ふるえ(振戦)

ふらふらしてまっすぐ歩けない、力はあるが上手に動かせない、動作が遅い、手足がふるえる など。

排尿障害

急にトイレに行きたくなる、排尿を我慢できない、漏らしてしまう など。トイレの回数が増える、尿を出しにくい、時間がかかる など。

性機能障害

性感覚の低下、勃起不全、射精不十分など。(精神的なストレスから起こることもあります。)

認識・感情の障害

思考速度の低下、記憶力・集中力・判断力の低下、急に泣いたり笑ったりする、抑うつ、常に機嫌が良すぎる など。

疲労・疲労感

動くとすぐ疲れる、動かなくても疲労感が絶えずある など。

多発性硬化症(MS)の疾患の経緯について

 

MSは病気の時期と経過によって3つのタイプに分けられます。

再発寛解(かんかい)型MS

9割以上の方は、このタイプで発症します。急に症状があらわれる「増悪(ぞうあく)」があり、しばらくすると改善に向かいます。2回目以後の増悪を再発といい、再発と再発の間に比較的安定している寛解期があります。再発の後に後遺症が残ることがありますが、症状の持続的増悪や進行はみられません。無治療では多くの方が2年に1回程度再発しますが、再発の頻度は不規則で予測は難しく、個人差もあります。

二次進行型MS

最初は再発寛解型で始まりますが、途中からゆっくりとした症状の増悪が止まらなくなります。一時的に進行が停止することもありますが、回復し症状が軽くなることはなくなります。

一次進行型MS

最初から長期にわたって徐々に症状が進行します。進行が一時止まったり、わずかに改善することもあります。日本人MSの約6%がこのタイプです。