多発性硬化症について
治療法

MS治療には以下のように、目的や期待できる効果によって異なる治療法のグループがあります。


再発・進行防止のための長期治療

最も重要なのはMSの再発や進行を未然に抑えることです。現在利用できる治療法は、いずれも長期間継続することが必要です。MSと診断されたら、なるべく早めに再発進行防止のための治療を開始することが最も重要と考えられています。

MSは早期であるほど治療効果が高いことがわかっており、一度障害された脳神経組織の修復は現在の医学では難しいからです。脳に蓄積される組織の障害は、多くの場合自覚できないまま長期にわたり、水面下で病巣の蓄積が進行します。そのため、症状が出現してからでは治療が困難なことが多いのです。

MSの再発進行防止薬には、1ヵ月に1回投与する点滴薬、患者さんご自身で反復注射する注射薬や、飲み薬があります。
安全性が確保されるなら、より効果の高い治療を早期から開始することが望ましいですが、病状や個人の体質、医師の対処方法などにより、用いる薬剤は異なる場合があります。もちろん病状やMRI所見から疾患活動性が高いと判定されたら、効果の高い治療の必要度はより高いといえます。薬剤により効果と安全性を確保する方法は異なりますので、患者さんと医師がよく話し合って、患者さんご自身の必要度と希望に合った治療法を選ぶことが大切です。

再発・増悪期に行う短期治療

症状が激しく出ている時期には、病巣の炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイドホルモン(ステロイド)が使われます。点滴用のステロイドを大量に用いる治療(パルス療法)が一般的ですが、症状の回復が十分でないときは、続けて経口薬が用いられることもあります。ステロイドにはさまざまな副作用があり、長期間続けて使うことの効果は証明されていませんので、長期間の使用は推奨されていません。

急性の重症悪化の場合や重度の悪化がパルス療法で改善しなかった場合には、血漿交換療法が行われることがあります。人工透析のようなしくみで血液中からMSに関わる物質(抗体など)を取り除く治療法です。できるだけ早期に開始することが重要で、効果には個人差があります。

特定の症状に対する治療(後遺症を軽減するための治療)

鎮痛薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などが症状に応じて使われることがあり、対症療法と呼ばれます。
薬のほかに、障害を回復・軽減するためのリハビリテーションや、障害された神経組織を根本的にもとに戻したり障害を軽減するための再生・移植医療、ロボット工学により失われた機能を補完する方法などがあります。再生・移植医療やロボット工学はまだ研究段階で、将来の実用化が待たれます。